小学生の頃。
同級生の友達がいた。
あだ名は、名字を逆読みして、頭文字だけいうと、「Nちゃん」。
家も近所でよく一緒に遊んだ。
でも私は彼女を傷つけてしまった。
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目次
Nちゃんの家はお蕎麦屋さんの近く
Nちゃんの家は路地に入るお蕎麦屋さんの近くで、私の家は路地をずっと入っていったところだった。
お互いの家に行き来したりもしていた。
Nちゃんにはお兄ちゃんがいて、確かご両親は共働きでいつも家にいなかったような気がする。
Nちゃんには、なんでも話せた。
例えば、私が描いた絵が、誉められたことがあった。
担任の先生が、クラスのみんなの前で誉めてくれたのだ。
でもクラスには絵が得意な男子がいて、私の絵が誉められたことを良く思わないクラスメイトがいた。
「お前の絵のほうが上手なのにな」
絵が得意な男子に言っている声が聞こえてきた。
転校生だった私は、なるべく波風を立てたくないと思っていたから、絵を誉められてうれしかったというより、誉められたくなかったという気持ちになってしまった。
Nちゃんは私に、
「良かったね、絵が誉められて」
と無邪気に言ってくれた。
私は、
「イヤなの、誉められないほうが良かった。もうその話はしないで」
とNちゃんに返した。
Nちゃんは察してくれて、
「うん、わかった」
って言ってくれた。
親から「Nちゃんと関わるな」といわれる
Nちゃんは親友といえたと思う。
それなのに、何をして遊んだのか覚えていない。
たぶん学校のプールに一緒に通ったり、夏休みに市民プールに遊びに行ったりしていたかも。
楽しかった思い出、たくさんあるはずなのに、記憶の中から消えてしまっている。
それはきっと、そのほかの記憶が強烈すぎるから。
ある時、親から、
「もうNちゃんとは遊ばないように」
と言われた。
なんでかわからなかったけれど、小学3年生か4年生頃の私にとって、親の意見は絶対。
もうちょっと大人になっていたら、自分で判断ができたのに、と悔やまれる。
でも、私はNちゃんと遊び続けていた。たぶん、親にはバレないように。
Nちゃんから秘密を打ち明けられる
「Nちゃんとは遊ばないように」
という理由は、差別的なものだったと思われる。
その噂が近所で広まっていたのか、それをNちゃん自身も感じ取っていたのかわからないけれど、ある日、私はNちゃんに秘密を打ち明けられた。
そのときの風景を覚えている。
たぶん、放課後。夕暮れ時。
場所はどこか覚えていないけれど、Nちゃんは私からちょっと離れたところにいて背中を向けていた。
これは秘密なんだけど、
と話してくれたと思う。
私には話しておく、みたいな感じで。
Nちゃんは、差別されている理由を話してくれた。
私は親から言われていたこともあって、薄々気づいていたけれど、初めて聞くふりをした。
「絶対に、そうなの?」
と聞くと、
「うん・・・」
と返ってきて、
「そっか・・・」
と頷く。
「誰にも言わないで」
というNちゃんに、
「誰にも言わない」
と約束した。
「あの秘密、言っちゃうよ~」とからかう
だけど、私の性格の悪さったら。
秘密を打ち明けられてから、何度か、何かの拍子に、
「あの秘密、言っちゃうよ~」
とNちゃんをからかっていた。
もちろん、言うつもりなんて全くなかった。
悪ふざけ。冗談のつもりで。
ある時、Nちゃんがキレた。
「そんなに言いたいなら、言えばいいでしょ!」
それを境に、私はNちゃんをからかわなくなった。
Nちゃんはちょっと離れた小学校に転校した
その後、Nちゃんはひと駅離れた家に引っ越していき、小学校も転校。
会えないほど遠くに越したわけではないので、頻繁に連絡が来た。
会おうよ、遊ぼうよって。
近所に住んでいた時は、Nちゃんに会っていても親にはバレなかった。
学校も一緒だったし、普通に生活していても会えたから。
だけど、小学校が違うと、一緒に遊ぶとしたら、会う約束をしなくてはならない。
小学生の私は、遊びに行くときは、誰とどこに遊びに行くのかを親に報告していた。
Nちゃんに会うというと反対されるので、2人で会わずにほかの友達も誘った。
誘われても断ったこともあったかもしれない。
Nちゃんは気づいてしまう
私の態度がおかしいことに、Nちゃんは気づいたと思う。
自分と2人では会いたくないんだねって。
もしかしたら、私からも”差別”されていると感じたかもしれない。
そんなことはなかった、Nちゃんは大切な友達だったけれど、とにかく小学生の私は親に歯向かうなんて考えられなかった。
Nちゃんから連絡は来なくなった。
会うこともなくなった。
それきりだ。
Nちゃんがその後、どうしたのか、どこの中学に行ったのかすらわからない。
連絡を取り合おうということにもならないまま、月日が過ぎた。
でも、ずっと私は罪悪感を抱えている。
大切な友達を傷つけてしまった。
Nちゃんは、今でも覚えているだろうか。
もしかしたら、私との思い出は傷になっているだろうか。
ごめんなさい
ごめんなさい
大切な友達だったのに、傷つけてしまってごめんなさい
本当は会いたかった もっといっぱい2人で遊びたかった
少し成長してからも、会おうとする努力もしないでごめんなさい
Nちゃんは怒っているかもしれない。
Nちゃんは会いたいとも思っていないかもしれないね。
でもね、ひとつだけ。
あの時の秘密、誰にも言ってないよ。
これからも絶対、誰にも言わない。
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