いわゆる漫画家の世界では有名な締め切り前の修羅場も経験しました。
ご飯づくり担当のアシスタントならぬメシスタントもやりました。
修羅場時には他の漫画家さんもお手伝いに来ました。
アシスタントの先輩も、漫画家さんたちも、皆さん良い方たちばかりでした。
それは、他の漫画家さんが細か~い効果線を描きこむお手伝いをしながら、
「あ~、楽しい!」
と言った時だったのかもしれません。
「こういうの大好きなんだよね」
というような発言を聞いて、
え? 楽しい? この面倒な作業が楽しい??
思うと同時くらいにハッとしたのです。
――私は、この世界で勝負できる人間ではない。
それはすんなりと入ってきた気付きでした。
気付いて”しまった”という方が近いかもしれません。
一度、気付いてしまった真実はもう打ち消すことが出来ませんでした。
私が何故、漫画を描いていたかというと、
物語を創りたかったからです。
言葉にはできない想いなどを表現するのに、
また、私が表現したい世界を表現するのには漫画が最適だと思っていました。
そう、私は絵を描きたいからというより、物語を創るために絵を描いていました。
漫画家というのは、物語の作り手というより、漫”画家”と言うとおり、どちらかというと絵を描く人です。
物語が考えられないなら、原作がある作品を描けばいいというほど、絵を描くことに重心があるのです。
プロの漫画家さんと一緒に仕事をして、私は気付いてしまいました。
絵を描くのは嫌いじゃない、むしろ好きだ、でも——
絵に対する想い、情熱、姿勢が、私とは全然違う、
私はこの世界で勝負できる人じゃない、と。